孫や息子を装い、交通事故の示談金などの理由を言って、金を振り込ませる「オレオレ詐欺」の
被害が増え続けている。警察庁によると、昨年1年間の被害件数は分かっているだけでも4319件
被害総額は43億円を超える。「どうしてそんなに騙されるのだろうか」

  ◆被害は43億円

  まず横浜市の港南区役所を訪ねた。区はオレオレ詐欺防止用の電話に張るシールを作り、高齢
者世帯など約5400戸に配ったという。「電話をとる前に注意を呼びかける言葉が目に入れば」と総
務部次長の芳賀−巳さん(59)取り組みを聞くうち「実は、うちにも電話があったんです」と芳賀さん。
思わぬ展開になった。

  ◆よくできた話

  警察官を名乗る男から電話があり、妻に 「ご主人が脇見運転をして反対車線に飛び出し、対向車
と正面衝突しました。相手の車には夫婦が乗っていて、だんなさんの怪我は大したことないんですが、
奥さんは妊娠中でして。危険な状態かも知れません」。
  続いて、芳賀さんらしき男が電話口に出たが、あわてふためいた様子。まるで言葉にならない。
  この日、芳賀さんは休みで、車で実家の山梨に向かっていた。しかも、以前、正面衝突事故を起こし、
大怪我をしたことがある。「また……」。妻は気が動転し、すっかり信じた。
  再び、電話口に出た″警察官〃は続けた。「相手は示談にしてもいいと言っています。300万円でい
かがでしょうか」「300万円なんて、すぐには払えません」と言った言葉に救われた。「それなら100万円
でも」と、すぐの″値下げ〃に「変だ」と気付き、冷静になった。逆に名前や口座番号を聞き出そうとした
が、電話は切れた。気付かれたと察したらしい。
 偶然が重なった面もあるが、同じ状況に置かれたら「もしかしたら」と思えてきた。

        ◇           ◇           ◇

  区のシールの対策3カ条には「あわてない」「事実を確認する」と共に「名乗らせる」とある。孫や子供
の名前を呼びかけると、本人だと確認することができなくなってしまうのだ。

     ◆調べ上げた上

  最近は、「息子の名前など個人情報を入手した上で犯行に及んでいるケースがある」と検察庁。
  神奈川県では、卒業した大学名まで言った事例もあった。同県馨によると、今年2月中旬横浜市内の
男性64)が「息子に金を貸している。払わないなら連れて行く」と脅され、120万円を振り込んだ事件は、
息子の名前、住所、生年月日に携帯電話の番号を知っていた。息子の加入する携帯電話会社に連絡し
て、一時的に通話ができないようにしてから電話をしてくる用意周到さだ。
  また、交通事故を装い、警察官、交通事故の相手、修理業者、息子の4役が登場するなど手口はます
ます巧妙になっている。名目も「交通事故」 「借金の返済」 「友人の連帯保証人」などが使われ、警察官
や弁護士を装うケースも増えている。
  脅し文句もエスカレート。「誘拐した」 「外国で働かせる」 「売り飛ばす」など。息子役に電話口で泣きじ
ゃくられ、いてもたってもいられない心境で金を振り込んだという被害者も多い。

  ◆思い込みから

 それにしても、どうして、騙されてしまうのだろうか。「だからあなたは騙される」(角川書店)の著者、立
命館大学の安斉育郎教授(63)は、「すべては思い込みから始まる」 と指摘す
る。「人間は部分的な情報
から全体を想像する力を持っている。騙されやすい動物なんです」権威に弱い面もあり、警察官や弁護士
と名乗られると信じてしまいがちだという。
  一人暮らしのお年寄や高齢世帯が増えている社会状況も、被害が増える背景にある。「高齢になれば
耳が遠くなるし、判断力も鈍る。思い込みは誰でも陥る。一人で対応しないことが大事。親類、地域、行政
などがセーフテイネットを作ることが必要」と話す。2人だけで暮らす両親の姿が浮かぶ。思わず電話をか
けて「気を付けて」と言わずにいられなかった。
  それにしても個人情報はどこから漏れるのか。

     「オレ、オレ」と電話がかかってきたら・・・・・・・・・・

 @ 落ち着いて話を聞く。相手に先に名乗らせる。不用意に子供や孫の名前を呼びかけない。

 A 要点をメモし、いったん電話を切る。

 B 一人で判断して行動せず、家族や親しい人に相談する。

 C 本人と連絡を取り、事実を確認する。

 D お金を振り込む前に、もう一度事実の確認を。

 E 「おかしいな」と思ったら、110番または近くの警察署に通報する。

           〓愛知県警察のホームページより〓

「オレオレ詐欺」撃退法

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